ジェレミー・スコットによる「モスキーノ(MOSCHINO)」デビューショーになった2019-20年秋冬コレクションは、「マクドナルド」など誰もが知っているモチーフを多用した痛快パロディで話題になった。ファーストルックは、赤 × 黄色のマクドナルドカラーに染めたおなじみのノーカラースーツ。チェーンバッグやシューズにはこれ見よがしに”M”のロゴがのせられた。中盤は、ブラック&ゴールドでギラギラにドレスアップしたラッパーのようなスタイル。その後は、表情豊かな「スポンジ・ボブ」が、ウエアやバリエーション豊富なバッグに登場。終盤は、「バドワイザー」や「ハーシーズ」などのパッケージをラグジュアリーなドレスに仕立てた。ユーモラスでちょっとシニカル、自由奔放でやんちゃなクリエイションで魅了した創業デザイナーのフランコ・モスキーノを思い起こさせた。ショー終了後には、一部のコレクションをオンラインで販売。即完売したことも話題になった。
「モスキーノ」にはたくさんのアーカイブがあるが、どこを参考にした?
重要だと考える3つのポイントがある。”日常着としてのスーツ”、90年代のヒップホップが流行していた時期に人気を集めた”ストリートスタイルの要素”、そしてブランドとしてよく知られている”楽しくて驚きのあるドレス”。
その3つの要素がしっかりと表現されていた。また、あなたとフランコ・モスキーノには、たくさんの共通点があると思うが。
フランコと僕には多くの共通したDNAがあり、だからこそ僕はこの仕事を受けたんだ。彼の仕事にシンパシーを感じなければ、受けることはなかった!僕たちの共通点で最もユニークなところは、2人ともユーモアをコレクションに反映しているところ。これは、ファッションではとてもレアなことだと思う。
パロディは、ともすればチープな印象になってしまう。けれど今回のコレクションは違った。
最高のテーラー、パタンナー、裁縫師たちと仕事ができるからだよ。「モスキーノ」を生み出すアエッフェ社は、世界で最も良いマニュファクチャーだと思う。
「マクドナルド」や「バドワイザー」などアメリカのブランドを選んだのは、あなたがアメリカ人だから?
僕がアメリカ人であることも要因かもしれない。けれど、何よりもグローバルにアピールする力があるからこれらのブランドを選んだんだ。日本にも「マクドナルド」があるように、世界のさまざまな国にも存在する。そして、多くの人は「バドワイザー」のロゴを認識できるでしょ?デザインを見ただけでユーモアを理解できること、つまりユニバーサルランゲージだからなんだ。
アイキャッチな”M”のロゴをのせたウエアやショーでおみやげとして配ったiPhoneケースは、SNSを通じて瞬く間に世界中に広がった。意図していた?
いいえ。僕はデザインをするうえでとてもヴィジュアルを大切にするから、作品もおのずとフォトジェニックになるんだと思う。グラフィカルでアイコニックなスタイルを好んでいるから。ただ、こんなにも広がったのは僕のデザインの中に美しさがあったからかな(笑)。
発表したアイテムの一部をショー直後からオンラインで販売。売り切れ続出だった。
カプセルコレクションがすぐに売り切れたのは、とても素晴らしいこと。そもそもこのアイデアは、どのように「ファストファッション」を表現するか、ということだったんだ。それは、ファストフードとハイファッションをミックスするということでもあった。ルックが出来上がった時に、そのコンセプトをさらに発展させ、カプセルコレクションとしてショー直後から売り出すことは、とても当たり前のように思えたんだ。
あなた自身もファストフードをよく食べる?
僕の好きなファストフードはピザで、食べるのはイタリアにいる時だけだよ!